2019年4月1日より、AHAの国際トレーニングセンターである日本ACLS協会の新しいトレーニングサイトとして認定を受けた聖路加トレーニングサイト。

コースは聖路加国際大学の専用シミュレーションセンターを拠点に開催され、院内スタッフを中心に、将来的に一般市民から医療者まで幅広い方を対象としていく予定だそう。

今回は、聖路加トレーニングサイトの初代サイト長となる田村様に、聖路加トレーニングサイトや心肺蘇生に対するありかたなどをうかがってきました。

学校法人 聖路加国際大学 聖路加国際病院にて副看護部長を務める田村富美子さん。聖路加トレーニングサイトではサイト長に就任することになった。

”じゃあ”ってことで就任しました(笑)

―まずは聖路加トレーニングサイトについて教えてください。

聖路加国際病院は、2012年7月にJCI(国際病院機能評価)を取得し、院内スタッフが世界標準の救命処置の資格を取得する必要があります。まずは、院内スタッフ対象のコースが中心となりますが東京都築地に拠点があるため、首都圏だけでなく羽田空港などを通じたアクセスも良く、AHAトレーニングの中心になれればいいなと思っています。

真新しいトレーニングサイトの看板と境田理事長・田中理事との一コマ。

―田村様が初代サイト長になられたということで、いきさつなどお聞きできますか?

日本ACLS協会では、基本的に医師の方がサイト長になられることが多いです。ただ、医師の中でインストラクター経験の長い方がいなかったので、経験や日常の役割から、”じゃあ”ってことで一念発起し、就任しました(笑)。聖路加自体がもともと看護系の大学だったので、看護師がサイト長になるということに抵抗もなく、むしろ「お願いね!」という形で後押ししてくれました。

―インストラクターになったきっかけは何だったのでしょう。

看護師として救急医療の現場に携わっていたので、必要なスキルとして心肺蘇生法を学ばなくてはいけないと思ったのが出発点です。経歴としては、はじめは手術室でチーム医療や急性期医療を経験しました。その後、集中治療を担当することになって、常に命と隣り合わせの看護を行ってきました。そんな中、心肺蘇生教育の担当を任されることになりまして、、、

―指導する側になっていったんですね。

そうです。なので教えるための知識やスキルをつけるためにインストラクターになるのは自然な流れでした。

シュミレーション教育の歴史というか積み重ねてきたものが他と違う部分だと感じています。

―救命処置に関わるコースを学べるところは日本ACLS協会以外にもあると思いますが、なぜ日本ACLS協会を選ばれたのでしょう。

様々な理由がありますが、コースの質が高いというのがまず第一にあります。今でこそ、心肺蘇生教育に関しては日本ACLS協会に限らず、いろいろな場所で受けることができますが、その中でもすごく実践的なのがAHA(アメリカ心臓協会)のコースであり、それをしっかりと広めているのが日本ACLS協会だと思います。もちろん座学もしっかりと行いますし大事なのですが、心肺蘇生に関してはその場で実践できるというのがすごく重要です。その面で、シュミレーション教育の歴史というか積み重ねてきたものが他と違う部分だと感じています。

取材日当日、聖路加国際大学シュミレーションセンターにてACLS講習を行っていた

―AHAの教育が入ってくる前から、こういった活動を行おうとしていたのが日本ACLS協会だとお聞きしました。今では全国60か所以上でサイトを展開しています。

それが日本ACLS協会を選んだもう一つの理由ですね。日本全国にあるのでアクセスがしやすいんです。受けたいと思ったときに、自分の身近な地域でトレーニングを受けることができるのが当協会の良さだと思います。私も、教育担当として他のスタッフを巻き込むのにすごくやりやすかったです。

院内や地域で倒れた方を確実に救いたい

―聖路加大学トレーニングサイトとして、また田村様として今後目指していくことなどありますか。

まずは、院内や地域で倒れた方を確実に救いたいです。例えば、医療従事者の方がいたら一般の人は皆、”当然心肺蘇生はできるだろう”と思うはずです。こんなことを言ったら不安になってしまう方もいるかもしれないのですが、、、実際は、医療従事者も専門外であったり、訓練を定期的にしていないと、心肺蘇生法が実践的なものになっていない場合が多いのです。

コース風景。使える知識にする為に、的確な実技のフィードバックが入る

―ええっ!そうなんですね。

もちろん知識としては持っているのですが、実際の現場に直面した際にできるかとは別問題です。もし自分が心肺停止になりかけた時、目の前に医療従事者がいたら「ああ、助かった」と思うはずですよね。ですから、まずは本当に助けられる医療従事者を増やしていくのが目標です。

―どんどんと増えていくといいですね。聖路加トレーニングサイトがその中心になっていくのだろうなとお話しを聞いて感じました。

実際、10年前に比べてだいぶ心肺蘇生に対する姿勢は変わってきていますし、総合病院では、心肺蘇生の教育に対する取り組みも積極的になってきています。

ただ、小規模病院やクリニックではそういった病院独自の研修が体系化されていないことも多いので、そこで働かれている方などにはぜひ聖路加トレーニングサイトに足を運んでもらってコースを受講していただきたいですね。

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